Micron DDR5 MRDIMMは、AIサーバーやHPCで「CPU側のメインメモリ帯域が足りない」場面を読むための製品です。GPU近傍のHBM4や、低電力フォームファクターのSOCAMM2とは、効く場所が違います。
2026年5月に公開されたSTAC-A2のINTC260430結果では、HPE ProLiant Compute XD230、Intel Xeon 6980P、Micron MRDIMMの構成が、baseline cold runで33.4msの新記録とされています。Micronの公式ブログは同じ結果について、100.8 options/sec、231,271 options/kWh、24枚の64GB 8,800MT/s MRDIMM構成などを補足しています。
ただし、STAC-A2は金融リスク分析の公開ベンチマークです。この記事では、Micron公式資料とSTAC公開ページで確認できる範囲に絞り、MRDIMMを導入判断へ落とすときの確認順を整理します。Micron Watch JapanはMicron Technologyおよび関係会社とは非提携の独立サイトです。
3行まとめ
このテーマをもう少し広げて見るなら、MicronのAIメモリ階層をCOMPUTEX 2026後に読む:HBM4、SOCAMM2、MRDIMM、DDR5の使い分け と Micron HBM4 48GB 16Hサンプルを読む:36GB 12H量産との違いとAIサーバー容量増の確認点 も合わせて確認してください。MRDIMMをCPU側メインメモリの帯域改善として位置づけ、HBM4やSOCAMM2との役割分担を確認しやすくするため。
MRDIMMはXeon 6サーバーでCPUが直接参照するメインメモリの帯域、遅延、容量を詰める選択肢。
HPE ProLiant Compute XD230、Intel Xeon 6980P、Micron MRDIMMの構成でbaseline cold run 33.4msが示された。
自社ワークロードのメモリ帯域、HCL、冷却、ラック電力、RDIMMとの差額をそろえて評価する。
まず、公開ベンチマークの数字と自社サーバーでの導入条件を切り分ける。
- Micron MRDIMMは、Intel Xeon 6サーバーでCPU側メインメモリの帯域、遅延、電力効率を詰めて見るためのDDR5メモリです。
- STAC-A2のINTC260430公開ページでは、HPE ProLiant Compute XD230、Intel Xeon 6980P、Micron MRDIMMの構成がbaseline cold run 33.4msを記録したと説明されています。
- 導入判断では、STAC-A2の数字をそのままAI推論全般へ広げず、自社ワークロードのメモリ帯域、HCL、冷却、ラック電力、RDIMMとの差額を確認する必要があります。
STAC-A2で何が起きたのか
33.4ms、0.033秒、35.2msは出典と指標名をそろえて読み、混ぜて比較しない。
今回の需要シグナルは、単なる「Micronの新しいメモリが速い」という話ではありません。2026年6月3日ごろ、専門コミュニティでHPE XD230、Intel Xeon 6980P、Micron MRDIMMを使ったSTAC-A2公開結果が共有され、COMPUTEX後のAIメモリ階層の議論ともつながりました。
ここで見るべき問いは、株価材料ではなく、CPUサーバーの主記憶としてMRDIMMがどこに効くのかです。すでに公開済みの<a href="https://mu-watch.blog.mo-gmo.com/mu-20-micron-256gb-ddr5-rdimm-1gamma-ai-server-memory/">Micron 256GB DDR5 RDIMMの記事</a>では容量密度と1ガンマDRAMを扱いましたが、MRDIMMでは容量だけでなく、CPUコアを待たせない帯域と遅延が主題になります。
STAC公開ページで確認できる結果
STACの公開ページは、2026年5月20日付で「STAC-A2 on HPE ProLiant Compute XD230 with Intel Xeon 6980P Processors and Micron MRDIMMs」としてINTC260430を掲載しています。公開ページで確認できる主な点は次の通りです。
| 確認項目 | 公開ページで確認できる内容 | 読み方 |
|---|---|---|
| システム | HPE ProLiant Compute XD230 | サーバープラットフォーム込みの結果として読む |
| CPU | Intel Xeon 6980P processors | Xeon 6世代のCPU側メモリ評価として読む |
| メモリ | Micron MRDIMMs | RDIMMではなくMRDIMMを使った構成 |
| ベンチマーク | STAC-A2 | 金融市場リスク分析向けの公開ベンチマーク |
| 代表値 | baseline problem sizeのcold runで33.4ms | 低遅延の成果として見るが、全ワークロードへ一般化しない |
STACページは、同ソリューションが公開済みソリューションとの比較でbaseline cold runの新記録を出したことを示しています。また、Intel Xeon 6プロセッサー搭載サーバーの中で、throughput、energy efficiency、space efficiencyの面でも強い結果を示したと説明しています。
根拠と注意点
ここで大事なのは、STAC公開ページの情報は詳細レポートへの入口でもあることです。詳細な構成情報は対象者向けのレポートに含まれるため、この記事では公開ページとMicron公式ブログで確認できる範囲だけを根拠にします。
Micronブログが補足している実務的な読み方
Micronの公式ブログは、同じSTAC-A2結果を導入判断に近い指標へ分解しています。ブログ上の表では、Portfolio Throughputが100.8 options/sec、Energy Efficiencyが231,271 options/kWh、Space Efficiencyが133.8 options/hr/in cubed、Baseline Greeksのcoldが0.033 secondsとされています。
さらに、Micronはこの構成について、24 x 64GBのMicron 8,800MT/s DDR5 MRDIMMにより、合計1.5TBのシステムメモリを12チャネル/ソケットで構成したと説明しています。同一Xeon 6980PでRDIMMを使った構成との比較として、Micronブログは1.08倍のportfolio throughput、最大23%高速なlarge problem sizeのGreeks計算、1.29倍のenergy efficiency、1.65倍のspace efficiencyを挙げています。
この数字は強い材料ですが、読み方には注意が必要です。Micronブログには前世代プラットフォーム比の改善と、同一Xeon 6980P構成でのRDIMM比の改善が並びます。前世代比の大きな倍率を、RDIMMからMRDIMMへ替えただけの効果として読むと誤解します。
33.4ms、0.033秒、35.2msを混ぜない
今回のINTC260430について、STAC公開ページはbaseline cold run 33.4msと説明しています。Micronブログの表ではBaseline Greeks coldが0.033 secondsと書かれており、同じ桁の結果として読めます。
一方、Micronの過去ブログや関連リンクには、35.2 millisecondsという別のSTAC-A2成果も出てきます。これは今回のINTC260430そのものではなく、過去の協業結果として扱うべき数字です。本文や社内メモで使う場合は、必ず「今回のINTC260430」「過去の35.2ms」「Micronブログ内の0.033 seconds」を分けてください。
MRDIMMは何を解決するメモリか
- 1CPUコアが増える
Xeon 6のような多コアCPUでは、コア数だけを増やしても主記憶からデータが届かなければ処理は伸びにくい。
- 2帯域と遅延を見る
メモリ帯域、loaded latency、キャッシュミス、NUMAの偏りを確認し、コアが待っている場所を探す。
- 3MRDIMMを候補にする
32GBから256GBまでの容量レンジ、最大8.8K MT/s、RDIMM系構成に対する帯域改善の訴求を確認する。
- 4導入条件を詰める
対応CPU、サーバーHCL、DIMM枚数、容量、冷却、BIOS、電力上限がそろっているかを見る。
MRDIMMはCPUメモリチャネル上の直接接続メモリとして読み、CXLの容量拡張やGPU近傍のHBMとは役割を分ける。
MRDIMMは、CPUソケットに接続されるメインメモリの選択肢です。MicronのMRDIMM製品ページでは、Intel Xeon 6 processorsを使うAIやHPC向けに、より高い帯域、低いレイテンシ、大容量を狙うDDR5 MRDIMMとして位置づけられています。
Micron製品ページで確認できる範囲では、MRDIMMは32GBから256GBまでの容量レンジで提供され、データレートは最大8.8K MT/s、Micronの説明ではDDR5 RDIMM系の構成に対して最大39%の帯域改善を示す選択肢として紹介されています。ページ内では、loaded latencyを最大40%下げる訴求も示されています。
CPUコア数増加に対する帯域不足を補う
Xeon 6のような多コアCPUでは、CPUコアを増やしても、主記憶からデータが十分な速度で届かなければ処理は伸びません。これはAIだけの話ではなく、Monte Carlo、HPC、インメモリ分析、金融リスク計算、科学計算、データ前処理で起きます。
MRDIMMは、そうしたCPU側の帯域不足に向けた選択肢です。GPUに直結したHBMのようにアクセラレータ周辺だけを速くするのではなく、CPUが直接参照するメインメモリの帯域と容量を同時に見ます。
このため、MRDIMMを見るときの質問は「一番速いメモリか」ではありません。「いま使っているCPUサーバーの処理は、コアではなくメモリ帯域で止まっているのか」「RDIMM構成より高い帯域を使い切れるアプリケーションなのか」です。
導入候補にする条件
MRDIMMを候補にする条件は、CPUコア数を増やしても処理が伸びず、メモリ帯域やloaded latencyが明確な制約になっていることです。容量不足だけなら、より大容量のRDIMMやCXLメモリ拡張も別候補として残ります。
低遅延の直接接続メモリとして読む
MRDIMMは、CXLメモリ拡張とも役割が違います。CXLは容量拡張やメモリプールの文脈で語られることが多く、直接接続のDIMMとは遅延やソフトウェア設計の前提が異なります。MRDIMMは、CPUメモリチャネル上のDDR5メモリとして、帯域と遅延を近い場所で改善する選択肢です。
したがって、容量だけが足りないならCXLやより大容量のRDIMMが候補に残ります。帯域が足りず、CPUコアがメモリ待ちになっているなら、MRDIMMを候補へ上げる意味が出ます。
導入条件は製品ページだけで完結しない
Micron製品ページで「Intel Xeon 6 processors」と説明されていても、それだけで任意のXeon 6サーバーに導入できるとは限りません。サーバーベンダーのHCL、BIOS、DIMM構成、冷却、ラック電力、保守条件が必要です。
とくにMRDIMMは、既存RDIMMと同じ感覚で差し替える部品として扱うより、サーバープラットフォーム、CPU、冷却、電力を含めた構成品として確認した方が安全です。
RDIMM、HBM4、SOCAMM2とはどう分けるか
単純な優劣ではなく、CPU側、GPU側、低電力フォームファクター、容量拡張のどこを見ているかで分ける。
Micronの2026年の話題は、HBM4、SOCAMM2、DDR5 RDIMM、MRDIMM、GDDR7、SSDまで横に広がっています。MRDIMMを理解するには、どれが同じ棚にある製品で、どれが別レイヤーの製品なのかを分ける必要があります。
すでに<a href="https://mu-watch.blog.mo-gmo.com/mu-18-micron-hbm4-vera-rubin-288gb-ai-memory/">HBM4の記事</a>ではVera Rubin向けのAIメモリ、<a href="https://mu-watch.blog.mo-gmo.com/mu-17-micron-256gb-socamm2-kv-cache-ai-memory/">SOCAMM2の記事</a>では低電力・高密度LPDDR5Xモジュールを扱っています。MRDIMMはそのどちらとも競合というより、CPU側メインメモリの選択肢として読むべきです。
| 種類 | 接続先 | 主な問い | MRDIMMとの違い |
|---|---|---|---|
| DDR5 RDIMM | CPUメモリチャネル | 標準的な容量、互換性、安定調達 | MRDIMMより帯域面の伸びは控えめだが、採用範囲は広い |
| DDR5 MRDIMM | CPUメモリチャネル | CPU側の帯域、低遅延、容量密度 | Xeon 6対応構成で帯域不足を詰める候補 |
| HBM4 | GPU/AIアクセラレータ近傍 | アクセラレータ側の超広帯域 | CPUメインメモリではなく、GPU側のボトルネックを見る |
| SOCAMM2 | 低電力LPDDRモジュール | 高密度、低電力、フォームファクター | CPUサーバーの標準DIMMとは前提が違う |
| CXLメモリ | CPUからCXL経由 | 容量拡張、メモリプール | 遅延やソフトウェア設計の前提が違う |
評価基準
この表は勝敗表ではありません。評価基準は、どのプロセッサーに近い場所で、どのボトルネックを解くために使うかです。
RDIMMは標準的な容量と安定調達の軸
RDIMMは、サーバー導入で最初に見る標準的な選択肢です。容量、互換性、サーバーベンダーのHCL、調達のしやすさ、価格、保守交換の扱いやすさが判断軸になります。
Micronの256GB DDR5 RDIMMの話題は、1ガンマDRAMと3DS TSVを使い、1枚あたり容量と電力効率を高める文脈でした。RDIMMは「既存のCPUサーバーで容量をどう増やすか」という問いに近く、MRDIMMは「多コアCPUをメモリ帯域で待たせないか」という問いに近い製品です。
HBM4はGPU/アクセラレータ側の帯域を読む
HBM4は、GPUやAIアクセラレータの近くで超広帯域を提供するメモリです。MicronのHBM4はNVIDIA Vera Rubin向けの文脈で語られ、AIモデルの学習や推論でGPU側のメモリ帯域、容量、電力効率を支えます。
MRDIMMは、GPU側のHBMを置き換えるものではありません。CPU側で前処理、シミュレーション、データ分析、リスク計算が詰まっているときに見るメインメモリです。AIサーバー全体では、HBM4とMRDIMMが別々のボトルネックに効く可能性があります。
SOCAMM2は低電力・高密度フォームファクターの文脈で読む
SOCAMM2は、LPDDR5Xベースの低電力・高密度フォームファクターとして、AIデータセンターやKVキャッシュの近傍配置などの文脈で注目されています。電力や実装面積を抑えながら容量を増やす話です。
MRDIMMは、標準的なサーバーDIMMスロットとCPUメモリチャネルの文脈です。SOCAMM2を「MRDIMMより小さいから上位」と見るのではなく、設置場所、接続先、用途、認定の違いで読む必要があります。
Xeon 6サーバー導入判断に落とす
メモリ帯域、キャッシュミス、NUMAの偏り、スケーリング効率を測り、CPUコアがメモリ待ちになっているかを見る。
対象サーバーのHCL、Intel Xeon 6の対応、DIMM枚数、容量、BIOS、ファームウェアを確認する。
冷却方式、ラック電力、保守交換、既存RDIMMとの混在可否、OS設定をそろえて考える。
容量別のパーツ番号、納期、価格、RDIMM構成との差額、販売代理店の見積もり条件を確認する。
同じMRDIMMでも、CPU型番、ソケット数、メモリチャネル、冷却、電力上限が変われば結果は変わる。
MRDIMMの導入判断では、STAC-A2の公開値だけでは足りません。STAC-A2に近い金融リスク計算やMonte Carloでは強い材料になりますが、社内のAI前処理、検索、データベース、EDA、科学計算、ログ分析で同じ改善が出るとは限らないからです。
自社ワークロードがメモリ帯域で詰まっているか
最初に見るべきは、CPU使用率ではなく、メモリ帯域、キャッシュミス、NUMAの偏り、スケーリング効率です。CPUコアを増やしても処理時間が短くならない、ソケットをまたぐと急に遅くなる、同じ処理を並列化するとメモリ待ちが増えるなら、MRDIMMの検討価値が出ます。
逆に、GPU待ち、ストレージI/O待ち、ネットワーク待ち、アプリケーションロック、シリアル部分の支配が大きいなら、MRDIMMだけで改善する可能性は下がります。MicronブログのRDIMM比や前世代比を、そのまま社内のRAGや推論APIへ当てはめるのは危険です。
サーバー構成の前提をそろえる
STAC-A2のINTC260430は、HPE ProLiant Compute XD230、Intel Xeon 6980P、Micron MRDIMMという構成です。同じMicron MRDIMMでも、CPU型番、ソケット数、メモリチャネル、DIMM枚数、容量、冷却方式、BIOS、OS、電力上限が変われば結果は変わります。
PoCでは、RDIMM構成とMRDIMM構成を同じCPU、同じサーバー、同じアプリケーション、同じデータサイズ、同じスレッド数で比較します。さらに、平均値だけでなく、p95/p99の遅延、電力、温度、サーマルスロットリング、ラックあたり処理量も見るべきです。
比較条件
比較条件がそろわない場合、MRDIMMの効果とCPU世代、冷却、BIOS、DIMM枚数、電力上限の効果が混ざります。PoCでは、変える要素をメモリ構成に絞れるかを先に確認してください。
確認項目
導入前のチェックは、性能確認、互換確認、運用確認、調達確認の4つに分けると整理しやすくなります。
| 分類 | 確認すること | 保留すべき状態 |
|---|---|---|
| 性能 | メモリ帯域、キャッシュミス、NUMA、スレッドスケール、p95/p99遅延 | ボトルネックがI/OやGPU待ちで、メモリ帯域ではない |
| 互換 | サーバーHCL、CPU対応、BIOS、DIMM枚数、容量構成 | HCL未掲載、混在可否が不明 |
| 運用 | 冷却、ラック電力、温度、保守交換、監視項目 | 冷却条件や電力枠が未確定 |
| 調達 | パーツ番号、納期、価格、RDIMMとの差額、サポート条件 | 価格差を性能改善で回収できる見通しがない |
MRDIMMは高性能な部品ですが、導入会議で問うべきことは「STAC-A2で何msだったか」だけではありません。「自社のラックで、何ワット増えて、どれだけ処理量が増え、既存RDIMM構成との差額をどこで回収するか」です。
STAC-A2の数字を自社評価に変換する
- 1公開結果を分ける
100.8 options/secは処理量、33.4msは遅延、231,271 options/kWhは電力効率、133.8 options/hr/in cubedは空間効率として読む。
- 2近い処理を選ぶ
Monte Carlo、HPC、インメモリ分析、金融リスク計算、データ前処理など、メモリ帯域を使う処理に絞って見る。
- 3社内指標へ置く
p95やp99遅延、単位時間あたり処理量、電力あたり処理量、ラック密度、スケーリング効率を測る。
- 4RDIMM比を確認する
同じCPU、同じDIMM枚数、同じ容量、同じ電力条件でRDIMM構成と比較する。
- 5保留条件を見る
GPU待ち、ストレージI/O待ち、ネットワーク待ち、アプリケーションロックが支配的なら、MRDIMMだけでは改善しにくい。
throughput、latency、energy efficiency、space efficiencyは同じ速さではないため、PoCでは別々に判定する。
STAC-A2の数字は、導入判断の出発点にはなります。ただし、数字を読む単位を間違えると、ベンチマーク記事の印象だけが残ってしまいます。
throughput、latency、energy efficiencyを別々に見る
Micronブログの100.8 options/secは、portfolio throughputです。これは処理量の指標です。0.033 secondsやSTAC公開ページの33.4msは、Baseline Greeksのcold runに近い遅延の指標です。231,271 options/kWhは、電力あたりの処理量です。133.8 options/hr/in cubedは、空間効率です。
この4つは同じ「速さ」ではありません。自社PoCへ変換するときは、次のように置き換えると読みやすくなります。
| STAC-A2側の指標 | 自社で見る近い指標 | 判断 |
|---|---|---|
| options/sec | 1時間あたり処理ジョブ数、バッチ件数、クエリ件数 | 処理量が増えるか |
| cold run latency | 初回計算、初回ロード、p95/p99遅延 | 待ち時間が減るか |
| options/kWh | 消費電力あたりのジョブ数 | 電力制約内で伸びるか |
| options/hr/in cubed | ラック、U、床面積あたり処理量 | データセンター面積制約に効くか |
AI前処理なら、embedding生成前の特徴量計算、データ変換、圧縮展開、CPU側推論、検索前処理などが近い候補になります。HPCなら、メモリ帯域に敏感なカーネルやMonte Carlo系が候補です。データベースなら、CPUとメモリで完結する分析クエリが候補になります。
RDIMM比と前世代比を混ぜない
Micronブログでは、同一Xeon 6980P構成でのRDIMM比として、portfolio throughput 1.08倍、large problem sizeのGreeks計算が最大23%高速、energy efficiency 1.29倍、space efficiency 1.65倍と説明されています。
同じブログには、前世代プラットフォーム比として2.38倍のportfolio throughputなど、より大きな改善も出ています。これはCPU世代、サーバー、ソフトウェア、メモリ構成を含む比較として読むべきで、RDIMMからMRDIMMへ替えた差分だけではありません。
数字の分け方
社内資料では、「同一Xeon 6980PでのRDIMM比」と「前世代プラットフォーム比」を別々の行に置いてください。ここを混ぜると、MRDIMM単体の効果を過大評価しやすくなります。
上振れしやすい処理、下振れしやすい処理
上振れしやすいのは、メモリ帯域に敏感で、CPUコア数が多く、データがメモリ内を大量に移動し、ラック電力やスペースが制約になる処理です。金融リスク計算、HPC、シミュレーション、一部のデータ分析、CPU側AI前処理が候補になります。
下振れしやすいのは、ストレージI/O、ネットワーク、GPU、外部API、アプリケーションロックが支配的な処理です。GPU推論のトークン生成がHBMやGPU演算に支配されているなら、CPU側MRDIMMの改善は限定的かもしれません。
導入前に確認する資料と質問
HCL未掲載、冷却条件不明、価格差の回収不明、自社処理の帯域ボトルネック未確認なら判断を保留する。
MRDIMMを検討する順番は、ニュース記事から購入判断へ直行する形ではありません。公式資料、公開ベンチマーク、サーバーベンダー資料、自社計測の順に落とすのが現実的です。
公式資料の確認順
まずMicron MRDIMM製品ページで、対応CPU、容量レンジ、最大データレート、帯域・遅延の訴求を確認します。次にMicron DDR5製品ページで、RDIMMやDDR5全体の位置づけを確認します。
そのうえで、MicronのSTAC-A2ブログとSTAC公開ページを読みます。Micronブログは、ベンダー側がどの指標を重視しているかを知る資料です。STAC公開ページは、公開ベンチマーク結果の入口です。詳細レポートが加入者向けの場合は、公開されていない構成値を推測で補わないようにします。
最後に、導入候補のサーバーベンダーHCL、Intel Xeon 6の対応情報、販売代理店の構成見積もり、保守条件を確認します。Micronの製品ページだけで社内購入申請まで進めるのは早すぎます。
調達会議で聞く質問
調達会議では、次の質問を早い段階で出しておくと、MRDIMMが「速いが使えない構成」になるリスクを減らせます。
- 対象サーバーのHCLにMicron MRDIMM構成は掲載されているか。
- 容量別のパーツ番号、納期、価格、保守交換条件は確認できるか。
- RDIMM構成との差額を、処理量、電力効率、ラック密度で回収できるか。
- 必要な冷却条件、BIOS、ファームウェア、メモリ搭載ルールは何か。
- 既存RDIMMとの混在は可能か、または全面的な構成変更が必要か。
- 自社の主要ワークロードで、メモリ帯域が本当にボトルネックになっているか。
判断を保留すべき条件
保留条件
HCLが未掲載、冷却条件が不明、ラック電力が足りない、価格差が大きい、自社処理でメモリ帯域ボトルネックを確認できない。このどれかに当てはまるなら、MRDIMMの導入判断は保留にした方がよいでしょう。
STAC-A2のような公開ベンチマークは、強い参考材料です。しかし、公開ベンチマークは自社のアプリケーション、データサイズ、電力枠、調達条件そのものではありません。PoCでは、処理量、遅延、電力、温度、ラック密度、運用負荷を同時に見てください。
次に読むなら
2026年6月のMicron関連トピックは、<a href="https://mu-watch.blog.mo-gmo.com/monthly-topics-2026-06/">月次まとめ</a>にも追記していきます。公式発表、製品ページ更新、未確認情報の区別をまとめて追いたい場合は、そちらも確認してください。
次に読むなら
参照した主な情報源
- Micron MRDIMM製品ページ、確認日: 2026年6月6日
https://www.micron.com/products/memory/dram-modules/mrdimm
- Micron DDR5 DRAM製品ページ、確認日: 2026年6月6日
https://www.micron.com/products/dram/ddr5-sdram
- Micron公式ブログ「New STAC-A2 record shows how MRDIMMs scale financial risk analytics」、確認日: 2026年6月6日
https://www.micron.com/about/blog/memory/dram/new-stac-a2-record-shows-how-mrdimms-scale-financial-risk-analytics
- STAC公開ページ「STAC-A2 on HPE ProLiant Compute XD230 with Intel Xeon 6980P Processors and Micron MRDIMMs」、確認日: 2026年6月6日
https://stacresearch.com/news/stac-a2-on-hpe-proliant-compute-xd230-with-intel-xeon-6980p-processors-and-micron-mrdimms/
更新履歴
- 2026年6月6日
Micron MRDIMM製品ページ、Micron DDR5製品ページ、Micron STAC-A2公式ブログ、STAC INTC260430公開ページを確認。
- 詳細レポート確認時
STAC詳細レポートの加入者向け情報を確認できた場合は、公開ページだけでは見えない構成条件を分けて見直す。
- 調達条件更新時
OEM別HCL、価格、納期、容量別パーツ番号、保守条件が出た場合に導入判断を更新する。
初版では公開情報の範囲に限定し、未確認の価格、納期、OEM別HCLは断定しない。
- 2026年6月6日: Micron MRDIMM製品ページ、Micron DDR5製品ページ、Micron STAC-A2公式ブログ、STAC INTC260430公開ページを確認して初稿を作成。STAC詳細レポートの加入者向け情報、価格、納期、OEM別HCLは未確認として扱いました。
